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賃貸物件の仲介手数料の正しい定め方

最終更新日:2019/10/07

賃貸の仲介手数料につき0.5ヶ月分の返金を認めた裁判例が出たと聞きました。不動産仲介業者は、以後、賃貸の仲介手数料は0.5ヶ月分しか受け取ることができないのでしょうか。

 

居住用の賃貸物件を借りる際、不動産仲介業者から求められるがまま、1ヶ月分の仲介手数料を支払った経験がある方は多いように思います。

ところが、東京地裁は、令和元年8月7日、仲介業者に対し、賃貸の仲介手数料0.5ヶ月分の返金を求める判決を言い渡しました(平成30年(レ)第818号)。

なぜ返金は認められたのでしょうか。

1 法律上の定め

宅地建物取引業法46条は、不動産仲介業者の報酬について、次のように規定しています。

「1 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は賃借の代理人又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。

2 宅地建物取引業者は前項の額を超えて報酬を受けてはならない。」

この規定を受けて、国土交通省の告示内容は次のとおり定めています。

(前段)「宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の1.08倍に相当する金額以内とする。」

(後段)「この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.54倍に相当する金額以内とする。」

要するに、不動産仲介業者が貸主・借主双方から受け取ることのできる報酬の合計は1ヶ月分の賃料が上限とされ(前段。1.08倍とありますが、消費税を考慮したものですので、ここでは考慮外とします(以下同様))、借主又は貸主の一方から受け取ることのできる報酬は、原則、0.5ヶ月分の賃料で、例外的に、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合には、それ以上の仲介手数料を得ることができるとされています(後段)。

2 「媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合」とは

このように、借主又は貸主の一方から受け取ることの出来る報酬は0.5ヶ月分の賃料が原則であることは余り知られておらず、実態は、原則と例外が逆転して、1ヶ月分の賃料があたかも原則かのようになっているように思われます。

ただ、1ヶ月分の賃料を仲介手数料を受け取る場合、上記のとおり、「媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている」ことが必要となります。国土交通省作成の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によると、「当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合」とは、当該媒介の依頼を受けるに当たって、依頼者から借賃の1月分の0.54倍に相当する金額以上の報酬を受けることについての承諾を得ている場合を指すものであり、この依頼者の承諾は、宅地建物取引業者が媒介の依頼を受けるに当たって得ておくことが必要であり、依頼後に承諾を得ても後段に規定する承諾とはいえず、後段の規制を受けるものであるとされています。

では、どの段階で承諾を得れば、「媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得た」ことになるのでしょうか。上記東京地裁の事案でも、まさにこの点が争点になりました。上記東京地裁の事案を整理すると、次のようになります。

ア 賃借物件の問い合わせ等

イ 賃貸住宅入居申込書の提出

ウ 物件を定めて契約する旨の連絡

エ 1か月分の仲介手数料の記載のある賃貸明細書の交付

(仲介手数料が1ヶ月分であることの説明)

オ 賃貸借契約締結

このような事実経過の中で、原告(借主)はイ又はウの段階で承諾を得ておく必要があると主張したのに対し、被告(貸主)はエの段階で承諾を得ることで十分であると主張しました。要するに、借主側は事後にしか説明がなかった、貸主側は事前に説明したと主張し、実質的には、媒介契約が成立した時期を法律的にどうとらえるか、という点が争点になりました。

3 東京地裁の判断及び今後の影響

東京地裁は、この点につき、媒介とは、契約当事者の一方または双方から委託を受けて、両者の間に立って、売買、賃貸借等の契約の成立に向けてあっせん尽力する事実行為をいうところ、オの段階ではあっせん業務の大部分が終了しているからその時点で媒介契約が成立するとはいえない。ウの時点で契約締結日を確認し、その上で、勤務先への連絡をとり在籍確認をしたり、賃料などの条件を確認したり、賃貸借契約書や重要事項説明書の作成を行っており、これが媒介行為であるから、ウの連絡の時点で媒介契約が成立していると判断して、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ていたとは認めず、仲介業者に対し、返金を求めました。

本判決は、何かルールを変更したわけではなく、今後も1ヶ月分の仲介手数料を受け取ることは可能です。ただ、本判決の最も大きな意義は、賃貸の仲介手数料が賃料0.5ヶ月分が原則であることを周知させた点にあり、今後、0.5ヶ月分以上の報酬を得る場合には、事前の承諾を得るよう運用上の工夫が必要となってくると思われます。例えば、入居申込書作成の際に、あわせて「仲介手数料に関する覚書」の作成を依頼する等の工夫が必要がなってくるでしょう。

弁護士 上 田  貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp