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Q&A

空家でお困りの方はいませんか

最終更新日:2019/12/05

Q1 父が亡くなりました。母は既に亡くなっているので、相続人は私と弟の2名です。父名義の実家は、築50年の木造家屋で、父が施設に入所した5年前から空家になっています。兄弟とも遠方で生活しているためにメンテナンスもできていません。弟とは、相続の話合いがつかず、遺産分割調停中ですが、まだ決着の見通しはつきません。最近、空家対策が話題になっていますが、気をつけることはありますか。

Q2 父が亡くなりました。母は既に死亡し、兄弟もいないので相続人は私1人です。生前より父とは折り合いが悪く、僅かな財産や実家を引き継ぐ気になれないので、相続放棄を予定しています。放棄後は、空家となる実家の管理は免れるという理解でよいのでしょうか。

 

A1

1 空家等特措法による措置

空家問題は、最近ニュースでも社会問題として取り上げられることが増えてきました。平成27年に空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等特措法)が施行され、空家等の所有者又は管理者(所有者等)には、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等を適切に管理する努力義務が課されました。市町村に対しては、空家等対策計画の作成や計画に基づく対策の実施等の必要な措置を適切に講ずる努力義務が課されました。市町村には、空家の所有者調査、そのための固定資産税の課税情報の利用も認められています。

そして、空家等特措法は、倒壊等保安上の危険、衛生上の有害、景観を損なっている等の放置することが不適切であると認められる空家を、「特定空家」と定義し、市町村は、特定空家等の所有者に対して、除却、修繕、立木竹の伐採といった、周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるように、助言や指導をすることができます。助言や指導に従わなかった場合、市町村は、必要な措置の勧告、さらに命令、最終的には行政による代執行と手続を進めることが可能です。命令に従わなかった場合は、50万円以下の過料に処せられます。

さらに、特定空家について、市町村から勧告が出た場合、その空家の敷地について、固定資産税等の住宅用地特例の適用対象から除外されることになりました。つまり、課税額が大幅に増額する可能性があります。

2 本ケースでの対応

父親の遺産分割がまとまらないとのことですが、空家も相続対象財産であり、遺産分割が整うまでは、兄弟の2分の1ずつの共有状態にあります。従って、兄弟が空家等特措法上の所有者等に該当します。放置により、倒壊の危険が生じる等、近隣に悪影響を及ぼす場合は、「特定空家」と認定されて市町村の指導、助言等の対象になる可能性があります。

例えば、はみ出ている枝の伐採や、不安定な屋根瓦の修理程度であれば、目的物の現状を維持するための保存行為として兄が単独で実施することも可能です。しかし、建物の解体や除去は、兄弟の同意がないと困難です。一方で、早期に管理に着手せねば、市町村から勧告を受けると、税制上の不利益となります。

相続人間で合意ができれば、預貯金等他の遺産の分割方法が定まる前でも売却や解体を実施することも可能です。空家等特措法において、所有者等に適切管理が要請されている趣旨をふまえて、相続人間で、できる限り空家の相続方法について合意形成に努めることが望ましいと言えます。解体費用については、自治体より補助が出る場合もあります。

 

A2 相続放棄をすれば、直ちに空家の管理を免れるわけではない点は注意が必要です。民法上、相続放棄によって、次に相続人となる者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって管理を継続するよう定められています(940条1項)。

例えば、父親の兄弟がまだ存命中(父の両親は既に死亡)であれば、相談者の放棄によって、その兄弟が相続人になります。兄弟が「相続財産の管理を始めることができる」のはいつの時点と考えるかは、明確な定義がありません。父親の兄弟が、相談者の相続放棄を知り、自分が次順位の相続人として空家の管理を始めてくれれば、管理は引き継がれ相談者は管理義務を免れるのですが、負債の方が多い場合などは、その人も相続放棄をすることが予想されます。その場合は、「次に相続人となる者」がいなくなってしまうので、相談者が管理義務を負い続けることになります。

次順位の相続人も全員放棄し、相続人がいない状態になったら、相続財産管理人の選任を裁判所に申立て、相続財産管理人に空家の管理を引き継ぐことが可能です。但し、管理人の活動費・報酬をまかなえるだけの相続財産が存在しない場合は、申立人がその費用を裁判所に予納することが要請されるので、結局、相談者に費用負担が及んでしまう点が、悩ましい問題です。

放棄により管理義務が簡単に免れるわけではないことを念頭においた上で、専門家に相談しながら、相続財産全体を調査して対応を検討することになるでしょう。

弁護士 浦 本 真 希 uramoto@fujikake.lawyers-office.jp