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居住用不動産の生前贈与について

最終更新日:2021/01/13

私は、すでに高齢で、先も長くないと思いますので、30年以上人生をともにした妻の住居を確保するため、妻に対し、自宅不動産を生前贈与しようと考えています。このような生前贈与は、遺産分割手続や税金面において、どのように処理されますか。

 

・遺産分割手続において

被相続人が、財産を生前贈与した場合、遺産分割手続において、当該生前贈与は、相続財産の先渡しを受けたものとされます。すなわち、死亡時の相続財産に生前贈与分を加えて、生前贈与分を先渡ししたものとして、各人の相続分を判断することとなります。

このとき、特定の相続人が生前贈与等により被相続人から利益を受けることを「特別受益」といい、相続財産に生前贈与分を加えることを「持戻し」といいます。

 例えば、次のような、家族があったとします。

 被相続人 夫A

相続人  妻B、子C(法定相続分1/2ずつ)

相続財産 自宅土地建物(3000万円)、預金3000万円

 生前贈与等が何もなければ、遺産分割において、妻B及び子Cは、遺産6000万円を2分の1(3000万円)ずつ分割すればよいことになります。

 これに対し、夫Aが、5年前に、子Cに対し、自宅建築費用として1000万円を贈与していた場合、子Cは1000万円の特別受益を受けていますので、各人の相続分は次のとおりとなります。

相続財産

3,000万円+3,000万円+1,000万円(生前贈与分)=7,000万円

各人の相続分

妻B 7000万円÷2=3500万円

子C 7000万円÷2?1000万円(生前贈与分)=2500万円

 以上のように、「特別受益」を受けた相続人は、遺産分割において、「持戻し」がなされることにより、相続財産を先渡しした分の精算がなされることになります。

 このことは、配偶者に自宅不動産を生前贈与した場合でも、従前、同様の処理がなされていました。

ところが、法改正がなされ、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、配偶者に自宅を生前贈与又は遺言書によって贈与(遺贈)した場合、被相続人が当該不動産の持戻しを免除する意思表示があったと推定されることとなりました(民法903条4項)。

 上記事例において、夫Aが、妻Bに対し、自宅土地建物を生前贈与した場合、原則として、当該生前贈与の精算はなされないことになり、相続人である妻B及び子Cは、死亡時に残っている預金3000万円を2分の1ずつ分割すればよいこととなります。

妻B 3000万円÷2=1500万円 + 生前贈与された自宅土地建物3000万円

子C 3000万円÷2=1500万円

 このように、法改正により、高齢化社会の進展等に伴い、高齢配偶者の生活保障が図られ、自宅不動産の生前贈与を行うことで、高齢の配偶者に自宅を残せるだけでなく、遺産分割において、配偶者の多くを残せるよう配慮がなされました。

 

・税金面において

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合には、基礎控除のほかに、最高2000万円まで控除(配偶者控除)を受けることができます(夫婦の間での居住用不動産等を贈与したときの配偶者控除)。

このように、高齢配偶者の生活保障のため、自宅不動産の生前贈与は、遺産分割の面だけでなく、税金面でも優遇がなされておりますので、うまく活用していきましょう。

弁護士 上 田  貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp