メールフォームはこちら

078-341-3684

  1. 神戸湊川法律事務所
  2. Q&A
  3. インターネット上の誹謗中傷対策

Q&A

インターネット上の誹謗中傷対策

最終更新日:2021/11/08

SNS上に、娘のことを誹謗中傷する内容の書き込みが相次いであり、それが原因で娘が自殺してしまいました。このような書き込みをした者を特定するためには、どのようにすればよいでしょうか。また、「死ね」「きもい」といった投稿を行った者を厳罰に問うことはできないのでしょうか。

1 投稿者の特定について

SNS等のプラットフォームサービスの普及に伴い、インターネット上で気軽に自由なコミュニケーションを行うことができるようになりました。その一方で、匿名のまま不特定多数に向けて特定個人の誹謗中傷を書き込んだり、特定個人のアカウントに対して一方的に誹謗中傷のメッセージ等を発信したりする事例も発生しております。

近時、フジテレビの番組に出演していた方が、SNS上で誹謗中傷され、自殺するなど、インターネット上の誹謗中傷が深刻な社会問題となっております。

書き込みをした投稿者に対しては、損害賠償請求、削除請求、差止請求、刑事告訴を行う、謝罪を求める等の措置を求めることが予定されますが、それらを行うためには、まずは投稿者を特定する必要があります。

投稿者の特定のために、プロバイダ責任制限法4条1項の発信者情報開示請求権を行使しますが、一般的に匿名サイトでは、投稿者を特定するため、2段階の請求が必要となります。1段階目はサイト管理者(コンテンツプロバイダ)に対するIPアドレス等の開示請求で、2段階目は接続プロバイダ(アクセスプロバイダ)に対する投稿者の住所氏名の開示請求です。

もちろん、これらのプロバイダに対し任意の開示を求めることも可能ですが、権利侵害に該当するか否かの判断が困難なケースはもとより、権利侵害が明白と思われる場合であっても、実務上、発信者情報がプロバイダから任意に開示されることはそれほど多くないことが指摘されています。

そのため、投稿者を特定するためだけに、一般的に、ア.IPアドレス等の開示のため、コンテンツプロバイダへの「発信者情報開示仮処分命令」の申立て、イ.投稿者の住所氏名の開示のために、アクセスプロバイダへの「発信者情報開示請求訴訟」の提起という2回の裁判手続が必要となります。その上で、特定した投稿者に対する損害賠償請求等をしなければならないことを考えると、被害者の被害回復までに膨大な時間とコストがかかり、被害者にとって大きな負担であることが指摘されていました。

そこで、令和3年4月にプロバイダ責任制限法が改正され(公布から1年6月以内に施行)、これにより、発信者情報の開示手続を、簡易かつ迅速に行うことができるように、発信者情報の開示請求を1つの手続で行うことを可能とする、新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。

新たな裁判の具体的手続としては、被害者は、裁判所に対して、コンテンツプロバイダに対する開示命令を申し立てることにより、手続が開始されます。

コンテンツプロバイダにおいて、アクセスプロバイダの名称と住所が判明する場合は、提供命令により、コンテンツプロバイダがアクセスプロバイダの名称と住所を被害者に提供します(改正法15条1項1号イ)。

これをもとに被害者が同じ裁判所に対して、アクセスプロバイダに対する開示命令を申し立てることにより、コンテンツプロバイダからアクセスプロバイダに対して、IPアドレス等アクセスプロバイダが発信者を特定するための発信者情報が提供されます(提供命令・同2号)。

そして、発信者情報開示請求の要件を満たすと裁判所が判断した場合、コンテンツプロバイダが保有するIPアドレスや、アクセスプロバイダが保有する発信者の氏名・住所等が被害者に開示されます(開示命令・改正法8条)。

この間、発信者を特定することができなくなることを防止するため、裁判所は消去禁止命令を発令することができ、各プロバイダにおいて迅速なログの保全が行われます(改正法16条1項。なお、現在も、アクセスプロバイダに対する訴訟提起前に、発信者情報消去禁止仮処分命令申立を行うことが一般的です)。

2 侮辱罪の厳罰化の検討

具体的な事実を摘示した上で、公然と、被害者の社会的評価を低下させた場合には、刑事上、名誉毀損罪にあたる可能性がありますが、質問にあるように、単に「死ね」「きもい」といった投稿のように、その人の主観的評価を述べたにすぎない場合には、名誉毀損罪ではなく侮辱罪にあたりうるに過ぎません。

このように、「事実を摘示したかどうか」が名誉毀損罪と侮辱罪の区別の基準となりますが、名誉毀損罪と侮辱罪では法定刑に大きな違いがあります。

すなわち、名誉毀損罪の法定刑は、「3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金」であるのに対し、侮辱罪では「拘留(1日以上30日未満刑事施設に拘置する刑罰)または科料(1000円以上1万円未満の金額を支払う刑罰)」となり、侮辱罪は刑法典で最も軽い法定刑となっています。

しかし、「死ね」「きもい」といった個人の主観による誹謗中傷であっても、近時、SNSで誹謗中傷が繰り返され、自殺など取りかえしのつかない事態が生じていることを考慮して、侮辱罪の法定刑を「1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」に改正する案が検討されています。

以上のように、インターネット上における誹謗中傷の被害に対して、様々な方策が検討されているところですので、被害にあわれた方は、弁護士にご相談ください。

弁護士 上 田  貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp